（１０）達弥西心のわかりやすい話「別れ」

その時私は、そうだと思ったのです。何かを覚えておかないといけないと思ってメモをしたことは必ず忘れるし、何か格好いいことを言ってやろうと思うと全然記憶していなかったり、メモを持っていても読むのを忘れたりするのだと思ったのです。

だから別にメモしていなくても、そこでこう言われた、というのが彼にとってはとても大事で、その大事なことだけを話しているのだと思うのですが、本当に克明に話していました。

「え？だって、私が体験したことですから。」と言うのです。「体験したことを順番にしゃべっているだけです。」と言っていました。

まったく原稿を読まずに同じ話をしているので、私は質問をしました。「どうやって覚えているのですか？原稿なしによく同じ話ができますね。私は実は３回聞いたのですが、３回ともピタッと同じで、ここでおふくろが言った言葉とか、全部一緒なんですけれども。」と言ったら、彼は途惑うように言ったのです。

昔の話ですが、損害保険のセールスで日本一になった人の講演を聞いたことがありますが、この人の話を３回くらい聞いたのですが、毎回同じ話をするのです。